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解き放つために

大人になるまでこの街で
きみの横顔を見つめてきたよ。
悔しそうに噛みしめたくちびる、
あどけなく笑うときの左えくぼ。
けれど、この夏 未だかつてない
唯一のまなざしをしてみせたね。
8月のまぶしい夕立のごとく
まっすぐ この目に焼きつくような。
「あの子、ちゃんと歩いてきたのね。
こんな強い瞳で生きていくのね」
きみを見ていると、わかってしまうんだ。
ひとは傷を得て、うつくしくなる。

微笑みは武器であり、ときに防御となる。
身をひく術を知ってしまったわたしたち。
でも、くちびるへ紅をひく その瞬間は
何ものからも逃げ出さないの。
わたしはいつでも わたしを従えている。

変わることは、過去の自分への裏切りじゃない。
「こんな『わたし』もいたんだ。
こんな『わたし』になれるんだ」
未知のひかり、臆さずに引き受けて
きょうの輝きを集めよう。
街、わたしたちの夏が乱反射している。

傷ひとつなく立ち回れることを
かしこさとは呼ばないで。
壁へ立ち向かうことをいとわずに、
そして、いつだって ここを去る
軽やかさも握りしめていよう。
ようやく語りはじめた、わたしたちの今。
さえぎらないで
わたしたちのことばを
わたしたちのひかりを。
黙らせようと説き伏せてくる影たちには、
遠く 消せないひかりで闇を裂く。

きみは空へくちづけをおくる。
空はきみのくちづけに染まる。
塗りかえるたびに
わたしたちの未来は更新されていく。
ことばを解き放つため、
くちびるに
「きょうのわたし」をまとって。

PROFILE

文月悠光Fuzuki Yumi

詩人。1991年北海道生まれ。16歳で現代詩手帖賞を受賞。高校3年の時に発表した第1詩集『適切な世界の適切ならざる私』(思潮社)で、中原中也賞、丸山豊記念現代詩賞を最年少で受賞。詩集に『屋根よりも深々と』(思潮社)、『わたしたちの猫』(ナナロク社)。近年は、エッセイ集『洗礼ダイアリー』(ポプラ社)、『臆病な詩人、街へ出る。』(立東舎)が若い世代を中心に話題に。NHK全国学校音楽コンクール課題曲の作詞、詩の朗読、詩作の講座を開くなど広く活動中。http://fuzukiyumi.com/

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STAFF CREDIT

Collage ERIKO MATSUMOTO/Edit MOMO AKAGI、SARA FUJIOKA(Roaster)